経理を雇うなら?メリットや建設業経理士の資格について紹介

中小企業や個人事業主の経営者の方は、経理だけの専門職を雇用せずご自身で経理業務を行っている方も多くみられます。業務の円滑化や事業拡大の観点から経理スタッフを雇いたいと考えている方へ、雇用の際の注意点などを解説します。

経理を雇う際のポイント

経理業務を経営者以外が担当するには、主に「雇用する」「外注する」の2つの方法があります。それぞれのメリットやデメリット、経理担当を雇う際のポイントについても解説します。

雇用形態によるメリット、デメリット

<雇用する場合>
経理担当の社員を雇用するメリットとデメリットについて見ていきましょう。
経理担当を社員として雇用する際のメリットは、何よりも社内のお金の流れが分かりやすくなることです。

お金の流れを把握することで事業の弱みを発見できる点や、長期的に会社の成長を考えた経理業務が行える点もメリットと言えるでしょう。また、専門の経理職が社内にいることで他の社員も経理のノウハウを学べる機会があり、会社全体の業務の向上も見込めます。

デメリットとしては、社員として雇用する場合は、雇用保険や健康保険などのコストがかかる点が挙げられます。また、ごくまれではありますが経理を一人に任せっきりにすると不正が起こる可能性もあります。そういったことを防ぐためにはきちんとした管理・報告体制を事前につくっておくことが必要です。

<外注する場合>
経理業務を外注する際のメリットは、必要な時だけお願いできる点です。社員であれば当然、毎日出社するのが基本ですが、外注の場合は繁忙期のみなど調整することができます。長期にわたっての雇用契約でないため雇用するよりも低いコストになることが多いです。

また、派遣会社等を通す場合であれば、経理の資格保持者などに限定して業務を依頼することもできます。常に経理の全体を管理する人が居ない場合は、お金の流れが分かりにくい点がデメリットとなります。

後述しますが、経理を外注していて社内に経理担当がいないと公共工事の入札で不利になります。この点から社員として雇用を検討される経営者の方も多いでしょう。

一般的に、経営者のみですべての経理業務を行うのはどうしても負担が大きくなります。雇用か外注のいずれかにしても専門の人材に担当してもらえると安心ですね。

将来を見据えた人材を

経理を雇う際は将来を見据えた人材を雇用するのがおすすめです。会社が長期的に成長していくには、経理や会計業務は重要なポイントです。また、外部の方が会社を判断する材料のひとつは、決算書や試算表などです。そのため外部からの信頼を高めていくには、健全な帳簿付けを行う必要があります。

社内に経理専門の社員がいると、資金調達の際の資料作りや税務調査などにも対応しやすくなります。経理をはじめそれぞれの分野に専門職を配置することで経営者自身も本来の業務に集中できるでしょう。

建設業経理士とは?

建設業の会社がお金を管理するうえで「建設業経理士」という重要な資格があります。そこで、建設業経理士の概要や雇用する際のポイントについて解説します。

建築に特化した経理のプロ

建設業界には建築に特化した経理のプロが存在します。それが「建設業経理士」です。

建設業経理士とは、特殊な会計処理の多い建築業における財務・経理専門の人材です。建設業経理士は、業界独特の会計ルールを理解し、帳簿の作成や決算などの会計処理や、会計関連の書類作成といった事務処理を担当します。

建設業経理士は一般的な日商簿記の知識を習得したうえで、さらに建設業特有の会計ルールについても把握しています。たとえば、日商簿記の「売上」を、建設業経理では「完成工事高」と呼ぶ、などの違いがあります。2級以上の資格試験の合格者は建設業簿記や原価計算など実践的な知識についても習得しており、高度な知識を持つ専門職として建設業の会社にとって不可欠な存在となっています。

雇用するなら2級以上の資格保持者を

建設業経理士には、1級~4級があり1級が最上位です。国家資格ではありませんが国土交通大臣登録経理試験となっており公共性の高い資格です。

国や自治体が行う公共工事の入札の際に、経営事項審査というものがあり、審査では¨正しく経理業務を行っているか¨¨倒産の危険はないか¨などが判断されます。その際に、建設業経理士がいると点数が加点される仕組みです。

ただし、すべての建設業経理士が評価の対象になるわけではありません。ポイントが加算されるのは1級と2級のみで、1級は1ポイント、2級は0.4ポイントです。ちなみに、税理士と公認会計士もそれぞれ1ポイント加算されることになっており建設業経理士1級の重要性がわかります。つまり公共事業の入札に参加する事業者の場合は、社内に建設業経理士2級以上の経理担当者がいるとたいへん有利であると言えるでしょう。

まとめ

建築業に関係する法律が、いかに複雑であるかを再確認いただけたでしょうか。建築技術が優れていても、建築関係の法律について知らなければ、会社の経営を危うくすることもあり得ます。

知っているつもりの法律も、定期的に内容をおさらいしておくとよいかもしれません。安全な工事を行えるよう注意を払いましょう。