「一人親方」の方は、法人化するべきなのか、このまま個人事業主として働くべきなのか、迷うことはありませんか?法人化で迷ったときには様々な観点から検討することが大切です。まずは、個人事業主と法人の違いについて詳しく知っておきましょう。
個人事業主と法人のおおまかな違いとは?
個人事業主と法人の違いを簡単にまとめると、
1「設立するための手続き」
2「国や自治体に納める税金」
3「社会から受ける信用」
の3つです。法人化を検討するにあたって、最初に直面する問題は設立時の手続きに時間がかかることです。
個人事業主は原則として税務署に開業届を提出するだけですが、法人化の際の手続きには様々な書類の提出や申請などに長い時間かかることもあります。また税務上でも法人は個人事業主と比べて納める税金が増えるので確認が必要です。
個人事業は手続き上は簡単に始めることができますが、社会における信用性は法人の方が高く、法人格でないと仕事が受注できない場合も多くあります。
法人化するのに最適な時期とは?
個人事業主から法人化することを「法人成り」と言いますが、最適な時期は一体いつなのでしょうか?ここでは法人成りを検討するべきタイミングについて見ていきましょう。
売上、利益額が上がったタイミング
最初の目安は売上高を基準に考えることです。売上が1,000万を超えると消費税が発生しますが、そのタイミングで法人成りすると¨事業開始から2年間は消費税の免税を受けることが出来る¨という税法があるので消費税の支払いが発生しません。そのラインを超えそう、という年度に法人化を検討する方も多いでしょう。
次に利益額について考えると、法人と個人事業主では発生する納税の種類が異なります。個人事業で利益が多く出た場合には代表者個人の所得税が高額になるので、法人化して本人の報酬と会社の利益を分けるという考え方もあります。いずれにしても売り上げが多くなり利益の増加が見込めるタイミングが法人化検討の時期と言えます。
決算時期から逆算して時期を決めることもできる
売上と利益額を基準とする以外にも、季節によって売り上げのピークに変動がある場合にはその時期に合わせて法人成りを検討する方法もあります。
個人の場合は1月~12月分を3月に確定申告するのが基本ですが、法人の場合は決済の時期を自身で決められます。例えば毎年8月に大きな売り上げがある場合、それを加味して9月に決算すると決めれば、決算前に売り上げが伸びているという実績になります。
法人化する前に確認するべきこと
法人化することで生まれる大きなメリットもありますが、同時に知っておく注意点もあります。すでに少し触れているものもありますが、法人化のメリット、デメリットについてもう一度確認しておきましょう。
法人化するメリット
メリットとして主に以下が挙げられます。
<信用力が上がる>
個人事業主よりも法人の方が信用力が格段に高くなります。
例えば、金融機関から借入を行いたい場合、個人事業主だと融資が通りにくいケースもあります。それだけではなく、会社によっては取引先を法人に限定している企業もあり、取引の幅を広げるためには法人化して、信用力を上げることが必須になります。
また、法人として事業を進めることでお客様や取引先は安心して仕事を任せることができます。法人化することで大きく仕事の幅が広がる可能性があるでしょう。
<会社と個人の財産が明確になる>
個人事業では、どうしても生活資金と事業資金が分かりにくくなってしまうことがあります。法人化することで代表者の個人資産と会社の資産とを明確に分別することができます。相続や事業継承の際にも法人格があるとスムーズに行える場合も多いでしょう。
また法人は有限責任となるのでもし倒産した場合にも個人資産と分けて考えることができます。
法人化する際に注意すべき点とは
把握しておくべき注意点はいくつかありますが代表的なものは以下です。
<設立時に登記の手続きと費用がかかる>
法人化する際には登記の手続きに費用がかかります。登記手続きは自分で行うことも出来ますが専門的な知識が必要なので司法書士などの専門家に依頼する場合が多いでしょう。一般的には最低でも20万円程度が目安と言われています。また別に資本金も必要なので、その資金も確保しておく必要があります。
<赤字でも税金の支払いがある>
個人事業主の場合は1年間の利益が赤字の場合は住民税や所得税が発生しませんが、法人の場合は赤字の大小にかかわらず法人住民税というものが発生します。また赤字であっても社会保険料の支払いや従業員がいる場合は当然、給与の支払いも発生します。ただし、赤字の繰越控除はできるので翌年以降が黒字の場合は利益から差し引きとなります。
迷った時は相談窓口を活用しましょう
法人化の直後は右も左もわからずに一人で抱え込んでしまうことがあります。分からないことを調べるのに思った以上に時間がかかってしまい、本来の事業の妨げになってしまうこともあるでしょう。
そんな時は専門家や窓口に相談しましょう。顧問税理士などをつけるには費用がかかりますが、しっかりと相談できることで結果的に節税や利益をあげることにもつながります。親身になってくれる相談者や窓口もたくさんあるので、まずは一度相談してみるのがおすすめです。
まとめ
法人は申請や税務上の手続きなども多く個人事業主と比べると大変だと感じることもあるかもしれません。しかし、信用力を上げることや節税について考えたときに、それ以上の大きな恩恵を受けることができるのも事実です。今後も継続して利益を出すことができる一人親方の方は事業拡大のためにも法人化を検討してみてはいかがでしょうか。