建設現場では多くの人材が共に働いていますが、その雇用形態にはさまざまな種類があります。そのなかでも「日雇い」と「日払い」は、混合してしまう場合がありますが、実は全く違う意味を持ちます。その違いについて、また雇用の現状についても含めて詳しく解説します。
日払い、日雇いの違いとは?
日払い、日雇いという言葉はよく似た響きを持つため、その違いをあまり意識せずに使っていることが多いのではないでしょうか。しかしこれら2つの単語は明確に異なる意味を持ちます。
各項目でもそれぞれを解説しますが、まず簡単に分けると、日払いとは継続的に雇用されていることが前提で、その中で日ごとの労働で給与が変動する雇用形態です。つまり働いた日数分の給与のみが支給される状態を指します。
一方、日雇いとはその言葉どおり1日だけの雇用で単発的に働く場合を指します。
それぞれの雇用方法の特徴
日払い、日雇いそれぞれの雇用方法についてさらに詳しく解説します。
<日払い>雇用について
日払い雇用とは、先に記載したとおり継続的に雇用されていることが前提です。そのなかで給与の計算が1日ごとに締められ、支払いは日単位や週単位で行われる場合もあります。
「日給月給制」という雇用方法では、その月の勤務日数分×日額で給与を計算して、原則として1ヶ月分がまとめて支払われます。現場で働かれる方にも多くみられる計算方法ではないでしょうか。また、「月給制」とは管理職に多く見られる雇用形態で、勤務日数に関わらず月の給与が固定されている給与形態です。
日払い、という言葉から連想すると、その日に払う・単発というイメージを持つ方も多いかもしれませんが、実際には連続して働いている方に対し、1日ごとに給与を計算して支払う計算方法についてを指しています。
<日雇い>雇用について
日雇い雇用は、継続しない単発や臨時雇用のことで即時の支払い形態を指します。
就労の際には、一般的に雇用主の健康保険に加入しますが、日雇いのような単発の雇用の場合には特例の制度が用意されています。下記のいずれかに当てはまる場合は「日雇特例被保険者制度」へ加入することになります。
1.2カ月以内の期間を定めて雇用される者
2.4カ月以内の季節業務で雇用される者
3.6カ月以内の臨時的事業の事業所で雇用される者
4.1カ月以内だけ雇用される日雇労働者
なお、これらの手続きは労働者本人が行う必要があります。
健康保険の他に、雇用保険に関しても「日雇労働被保険者」という制度があり、適用条件についてはさまざまな規定があるので事前に確認が必要です。雇用保険に関しては、本人と雇用主の折半が原則なので、雇う側にも保険料の負担や手続きが発生します。臨時雇用をする際はその点も注意しましょう。
建設業において「日雇い派遣」が禁止されている理由
一般的な派遣では、大元の雇用主が派遣会社に委託し、派遣会社に登録している者が現地に出向きます。その場合、派遣労働者への責任は派遣会社が保有する場合がほとんどです。
建設現場においては、多くの専門業(例えば、基礎工事、足場工事、電気工事など)に分かれており、たくさんの人材でひとつの現場を担います。そういったなかで、単発的な派遣労働者へ対しての指示を誰が行うかがあいまいになってしまったり、それが原因で万が一の事故がおきてしまったりするのを防ぐために、建設業では日雇い派遣が禁止されています。
(参考:「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(第三条)」)
ただし、例外として直接工事に直接かかわらない現場管理、事務などは、労働者派遣法の許可を得た上で派遣することができます。単発的に専門職の人員が必要な際には派遣労働ではなく請負となり、その場合は契約書等も必要です。
建設業における雇用者の現状と今後の課題とは
建設業に多いとされる日給月給制ですが、課題もあります。
例えば、雨天で現場作業が出来なかったり、お盆や正月などで月の現場稼働日が少なかったりする場合、雇用主側からは働いた日数だけの賃金で済むというメリットがありますが、労働者側は毎月、安定した収入が得られないというデメリットがあります。
労働者の雇用環境改善の面から週休2日制を推奨する声も多い昨今ですが、日給月給制の場合には、1日でも稼働日が減ると月の収入減少に直結してしまうので、安易に週休を増やすだけではなく、合わせて月給制への移行を検討するなどの対策が必要です。
国土交通省のデータによると、技能労働者の6割以上は日給制とされており雇用や収入が安定しないケースも多く、若手の技能労働者の確保のためにも改善が求められています。(技能労働者とは、建設工事の直接的な作業を行う技能を有する労働者のことを指しています。)
週休2日を確保し、労働者の安定的な雇用と働きやすい環境を生み出すためには、無理のない工期の設定と予算の設定、発注者との連携なども必要となってくるでしょう。
まとめ
雇用側の場合も労働者側の場合も、どのような雇用形態で働くかを把握しておくことは、トラブル防止の面でもとても大切です。建設現場では専門的で経験豊富な人材が常に求められます。そういった人材が十分に現場で活躍できるよう、それぞれに合った雇用方法の検討と待遇面の向上に、今後より一層配慮しなければならないといえるでしょう。