手元の事故を減らすには、手袋の使い分けが必須!最適な作業手袋の選び方とは?

建設現場では資材の運搬や加工など、手を使った危険を伴う作業が多く、手先の保護のために作業手袋の着用は必須です。今回は手元から現場を支える作業手袋の用途別に応じた使い分けについてご紹介します。

はじめに

みなさまは作業毎に手袋を使い分けることはできていますか?建設現場の業務は溶接・組み立て・運搬など多岐に渡り、それぞれで手袋に求められる性能も変わります。にも関わらず、手袋なんてどれも大差はないだろうと思って使い分けをせずにいると、作業の効率が著しく低下するだけではなく、切創事故や火傷など、時に大きな怪我や事故にも繋がりかねません!

もちろん、作業内容に合わせて材質や形状の違う作業手袋を使い分けている方も多くいらっしゃると思います。ですが、中には「どのような違いがあるのかを、詳しくは知らずに使っている」と言う声も。そこで今回は、今さら聞けない作業手袋の分類についてご紹介!正しい知識を持った上での道具選びは、安全な建設作業を実現する上で非常に重要ですので、しっかり覚えておきましょう。

作業に合わせた使い分けが重要!作業手袋選びのポイントとは?

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一般的に作業手袋というと、軍手・ゴム手袋・革手袋の3種類があります。それぞれに特徴があるので、それらの特性を理解した上で、作業内容に合わせた使い分けをすることが重要です。軍手・ゴム手袋・革手袋、それぞれが持つ機能や、どのような場面での使用に最適なのかを簡単にまとめていきたいと思います。

1.軍手

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軍手は安価で蒸れにくく吸汗性がある等の特徴を持ち、幅広い場面で使用されています。しかし、編物製品であることからゴム手袋などに比べると水や油、泥等が浸入し易く、突刺しに弱いという側面も。そのため汚れやダメージを受けやすいシーンでは他の作業手袋との使い分けを心がけるようにしましょう。

そして、軍手の購入や使用の際には、ゲージ(厚み)や編み方を意識して選ぶことが大切です。

・ゲージ

ゲージとは手袋の厚みを示す数値で、7〜13ゲージの軍手が一般的。ゲージ数が高ければ薄手になり、逆にゲージ数が低ければ厚手になります。全ての作業手袋に共通して言えることですが、厚手の手袋は丈夫である一方で細かな作業がしづらいので、薄手か厚手かは用途に合わせて選びましょう。

・編み方

軍手の編み方にはシノ・2本編・3本編・5本編があります。数字が大きくなるほど使用する糸の本数が多くなり丈夫になりますので、耐久性を求める方は5本編など、数値が高い軍手を選ぶと良いでしょう。

2.ゴム手袋

ゴム手袋と一口に言っても、素材となるゴムによってその機能も異なりますので、ゴム手袋を選ぶ際には素材に注目して選ぶことを心掛けましょう。素材ごとの特徴は下記のようになります。

・天然ゴム

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天然ゴムは柔軟性があるため低温環境下でも硬くなりにくく、引き裂きやひっかきに強い特性があります。他の素材に比べて滑り止め効果も高いので、運搬や土木作業に最適な素材ですが、油や溶剤が付着すると、穴が空いてしまったり、劣化が早まってしまうので注意が必要です。

・ニトリルゴム

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ニトリルゴムは耐油性・耐薬品性と強度に優れているので、油や薬品の取扱い、メッキ、機械整備、組み立て作業に適しており、手袋をつけたままでのスマホ操作も可能です。しかし、柔軟性には乏しく、低温環境下で硬くなるという性質や、水に濡れると素材が溶け出してヌルヌルするという特徴を持つので、作業状況に応じて使い分けを心がけましょう。

・ポリウレタン

摩耗に強く伸縮性があり、よくフィットするので細かい作業向きのポリウレタン手袋。ゴム系素材でありながら、通気性が高く軽量なので、長時間の作業でも手に負担をかけることなく作業を行えます。軍手のように汎用性の高いタイプですが、軍手よりも強度が高く細かい作業が行えるので、タフさが求められる建設現場では、ポリウレタンの手袋の方がおすすめかもしれません。

・塩化ビニール

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安価な上に耐油性・耐薬品性に強く耐久力があるため、軽作業から重作業まで広範囲での使用が可能です。一方、60°以上の熱や引き裂きには弱いという特徴があるため、耐久性を過信せず正しく理解して使いましょう。

3.革手袋

革手袋は、熱や突き刺しに強いほか、耐摩耗性にも優れています。ほつれが出にくいので、巻き込み事故が起きにくいのも特徴。加えて、天然素材ならではの伸縮性で手になじみやすく、通気性も高いので快適に作業を行うことができます。また、革手袋は使い込んでいくほどに風合いが増すので、愛着を持って使用することができますね。

そして、革手袋を選ぶ際のポイントは、加工方法と素材の2つがあります。他の手袋と同様に素材や形状が違うだけで、用途や使用感が変わってきますので、それぞれの特徴を理解しておきましょう。

加工方法

革手袋には同じ素材を使っていても、縫製方法や加工の違う手袋があり、それぞれで機能が変わります。革手袋の主な加工方法は下記の通りです。

・甲メリ

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甲の部分がメリヤス編み(甲部メリヤス)になっており、通気性が抜群な上、握ったり開いたりの動作が容易で快適な使用感が特徴です。その反面、甲の部分が薄くなっていることから、溶接などの重作業には向いていないので注意が必要です。

・内縫い

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縫い代が手袋の内側にあり、溶接やサンダーなどの熱や火花が当たっても糸が切れにくいのが特徴。何かに引っ掛けたり挟んだりすることも少ないので、レバー操作などにも適しています。

・背縫い

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縫い代が手袋の外側にあり、手を入れても違和感がありません。手袋の中に縫い目があるだけで、使い心地が幾分か悪くなるので、快適な使い心地を求めている方には、こちらの背縫い加工のタイプがおすすめです。

・当て付

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手のひら部分に補強を当てているので、耐久性が高くなっているのが特徴。重作業用の革手袋を選ぶ際には、こちらの加工がされているものを選ぶのがおすすめです。

4.切創事故を防止する耐切創手袋

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作業手袋にはさまざまな種類や用途の物があり、作業に合わせて使い分けることが重要であるということを再認識していただけたと思いますが、ここからは手元で発生する事故の中でも、とくに発生率の高い切創事故の防止に焦点を当てて紹介します。

建設現場では切創事故が多発

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建設現場では、金属板やガラス・刃物などの鋭利なものを扱う機会が多いため、切創事故が後を断ちません。実際に、厚生労働省の発表によると、切創事故の要因とされる「切れ・こすれ」の事故は、全事故の中でも5番目に多く発生しているとのこと。

切創事故発生の可能性がある作業を行う際には、作業手袋の着用は必須であることはもちろんのことながら、十分な切創機能を備えた耐切創手袋の使用が理想的です。

耐切創手袋とは?

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耐切創繊維(切れにくい機能性繊維)を使用した高い切創性能を誇る手袋を耐切創手袋と呼びます。耐切創手袋には、A(弱)~F(強)及び0(弱)~5(強)の耐切創レベルが特殊な試験を行なった上で設定されているので、一目でどれくらいの耐切創機能を備えているのかがわかるようになっています。

耐切創試験には、回転刃試験(クープテスト)とEN ISO 13997 TDM試験の2種類があり、二重の試験を行う事によって、正確な耐切創性能を計ろうというものです。

・回転刃試験(クープテスト)
手袋を測定台に固定し試験用刃物(回転刃)に一定の荷重をかけて試験片の上を往復運動させ、切断(貫通)に至るまでの往復回数を測定することで、耐切創性の評価値を0~5(5に近づくほど、耐切創性に優れる)で算出する試験方法。

・EN ISO 13997 TDM試験
試験片を測定台に固定し、試験用刃物(平刃)を試験片に押し付け一方向へ動かし貫通した時点の刃の移動距離を測定することで、耐切創性の評価値をA~F(Fに近づくほど、耐切創性に優れる)で算出する試験方法。

いかがでしょうか?もちろん、耐切創手袋を必ず使わなければならないという訳ではありません。ですが、先ほどから何度もお伝えしているように、手元の事故を減らすために作業に適した手袋の使い分けが重要ですので、発生率の高い切創事故を減らすためにも、切創手袋の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

状況に応じた使い分けも必要

ここまでで、作業手袋の着用の重要性についてお話しさせていただきましたが、最後に1点注意喚起をしておきたいことがございます。それは、グラインダーや丸鋸などの回転を伴う機械操作の際には、巻き込み事故発生の危険があるため、原則作業手袋の着用をお控えいただきたいということです。これは法令でも定められており、実際にゴム手袋を着用して、回転軸に巻き込まれた事故も発生しています。他にも塗料の撹拌機なども手袋を着用しての使用は禁止されているなど、とにかく一度機器の取扱説明書や注意事項欄に目を通して、どのような危険があるのかを確認しておくことが大切です。

作業手袋の着脱は面倒ではありますが、手元の事故を減らすためですので、状況に応じた使い分けの徹底をお願い致します。

まとめ

今回は作業手袋についてご紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか?毎日のように着用するものであるからこそ、ちゃんとした知識を持った上で、使い分けていきたいですね。また、今回ご紹介した作業手袋以外にも、さまざまなアイデアや機能が備わった作業手袋がありますので、現場の現場のみなさまで意見交換などをしてみてはいかがでしょうか?