建設業の人手不足を解消するには!?人材不足の原因と解決策

建設現場における人材不足は慢性化しています。いわゆる「3K」のイメージが大きく、特に若年層の定着率の低さは深刻です。そのため、現在では国や業界による環境改善が図られています。建設業の人手不足の現状や構造を考えながら、具体的な解決策を紹介します。

なぜ人材が不足する?建設業界を取り巻く現状の課題

建設業界では長年にわたって深刻な人手不足傾向にあります。主な原因を見ていきましょう。

きつい・危険・汚い、いわゆる「3K」のイメージがある

建設業界は一般的に、肉体労働による「きつい」、高所作業などの「危険」、汚れるための「汚い」の、いわゆる「3K」と呼ばれるイメージを持たれていることが多いです。

国土交通省が2019年にまとめた「建設業界の現状とこれまでの取組」によると、建設業全体で技術者の休暇日数平均は4週あたり5.07日で、週休2日(4週当たり8日)に至っていません。また、年間実労働時間は2036時間と、全産業平均と比較して約340時間もの長時間労働となっています。
(参照URLhttps://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001314888.pdf

長時間労働の常態化に加えて、週休2日も取得できない労働環境の実態が浮き彫りになっており、これらが他産業よりも「きつい」というイメージの一因になっています。

リーマン・ショック以降の「職人離れ」が継続

2008年のいわゆる「リーマン・ショック」による景気の落ち込み以降、国内の建設需要が激減したことで、仕事を失った職人の多くが建設業界を離れました。
その後、建設需要の回復によって求人状況は持ち直したものの、一度建設業界を引退した高齢の職人は戻ってきませんでした。そのため、職人数不足は現在も続いているのです。

若年層の就業率が減少。労働者の総数も減少の一途に

総務省「労働力調査」を基に国土交通省が推計したデータによると、平成30年の年齢階層別の建設技能労働者数は60歳以上が全体の約25%を占める一方、29歳以下の若年労働者は全体の11.1%と少なくなっています。

また、2018年における建設業全体の就業者数は503万人と、1997年のピーク時(685万人)から約27%も減少しています。
(参照URLhttps://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001314888.pdf

今後、高齢の就業者が大量離職していく中、若年層の就業率の低下が見込まれるため、さらなる人材不足が懸念されます。

国はどう動く?建設業界の人材不足解消に向けた、行政の取り組み例

このような建設業界の人材不足状況を改善するため、国土交通省は2018年に「建設業働き方改革加速化プログラム」を策定しています。これは、「長時間労働の是正」「給与・社会保険」「生産性向上」の3分野における新たな施策をパッケージとしてまとめたものです。

以下に主な内容を簡単に抜粋して紹介します。

1)長時間労働の是正に関する取り組み
[1]週休2日制の導入の後押し
ここでは、公共工事における週休2日工事の大幅な拡大や、働き方改革に積極的に取り組む企業を積極的に評価することで、週休2日制の確保を図る施策を策定しています。

[2]各発注者の特性を踏まえた適正な工期設定の推進
2018
年に国土交通省が策定した「適正な工期設定等のためのガイドライン」の改定などが盛り込まれています。

2)給与・社会保険に関する取り組み
[1]技能や経験にふさわしい処遇(給与)の実現
主に、技能や経験にふさわしい処遇(給与)の実現に向けた建設技能者の能力評価制度の策定が計画されています。

[2]社会保険加入のミニマム・スタンダード化
社会保険加入の徹底に向けた環境の整備を掲げています。

3)生産性向上に関する取り組み
[1]生産性の向上に取り組む建設企業の後押し 
積極的なICT活用を促すため、公共工事の積算基準等の改善が盛り込まれています。

[2]仕事の効率化
公共工事における関係する基準類の改定や、IoT・新技術の導入等による施工品質の向上と省力化が図られています。

[3]限られた人材・資機材の効率的な活用の促進
現場技術者の将来的な減少を見据え、技術者配置要件の合理化を検討することが計画されています。

(参考URLhttps://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo13_hh_000561.html
(参考URLhttps://www.mlit.go.jp/common/001226489.pdf

若手を増やしたい!人材不足を解決するために、現場ができる工夫とは?

人材不足を解決するためには、国が主導する施策だけではなく、それぞれが環境改善に向けた取り組みを行う必要があります。その中でも、強力に推進することが望ましい施策を2つ紹介します。

給与や待遇、福利厚生の改善で「働きやすい環境」づくり

建設業界では、1日単位で給与が定められる日給月給制を採用する企業が多いため、現状のまま週休2日制を導入すると収入が減少してしまいます。そのため、月単位で給与を固定する月給制に移行した上で週休2日制を導入する必要があります。その他にも社会保険への加入や、労働環境の見直しといった福利厚生の改善を行うことで長期安定的な人材確保に繫がります。

また、人材の定着には教育体制を整備が不可欠です。「仕事は見て覚えるもの」という古いやり方では、人材は育ちません。また、リーマン・ショック時の熟練者の離職により、現場レベルでの技術の継承が難しくなっています。マニュアルの整備や教育プログラムの策定により、未経験者でもスタートできる環境を整える必要があります。

人材の採用や求人は「攻めの姿勢」で積極的に!

求人においては、積極的な採用に取り組むことが大切です。求人広告では作業内容の具体的な紹介のほか、経営者の想いや経営ビジョンといった独自の魅力をアピールした文言を記載することで、同業他社と差別化する工夫をしましょう。

また、スカウトによる求人や、女性・外国人労働者枠の増設、学生向けに建設現場の見学会を行うなど、幅広い層が建設業で働ける機会を積極的に増やしていく取り組みも有効です。

おしゃれな作業着の導入で「汚い」イメージを払拭するのもアリ

いわゆる「3K」の中でも「汚い」イメージを払拭することで、若年層や女性の求人状況改善に役立つかもしれません。

近年、作業着のファッション化やアウトドアブームによる需要拡大などによって、作業着のデザイン性や機能性が向上しています。積極的に新しいタイプの作業着を導入することで、清潔感のあるイメージを持たれるようになるでしょう。

まとめ

建設業界の人材不足は、今後ますます深刻になります。国による施策だけでなく、業界全体が雇用条件や職場環境を見直し、働きやすい環境の整備に努める必要があります。建設業で働きたい人を増やすことで、人手不足を少しでも改善しなければいけません。